植物細胞培養を活用した素材開発
植物細胞培養では、ひとつの植物片があれば未分化の植物幹細胞を誘導することができます。
更に、培養によって大量に増殖することができますので、
自然環境からの搾取をすることなく、生態系の保護にも繋がります。
機能性の高い植物由来の原料を効率よく、かつ自然に優しい形で供給することができる技術です。
植物細胞培養技術
世の中の様々な製品で植物エキスが使用されています。
その多くは、天然資源から採取したものや栽培品を元に造られてきたため、原料の安定的な確保や持続的な生産に課題を抱えています。
そのような課題を解決し、効率よく植物エキスを生成することが出来るのがこの植物細胞培養技術です。
植物を細胞の状態のままで無限に増殖させることで植物が持つ植物性成分を効率良く造りだすことができる、サスティナブルな技術です。
三井化学グループでは、1980年代にムラサキ培養細胞を用いて色素成分シコニンを生産する技術を開発し、リップスティック用の化粧品原料として世界に先駆け実用化しました。
以来、現在に至るまで数多くの植物について細胞培養技術を用いた機能性原料の開発を手がけ、原植物よりも目的成分の生産効率が高い培養生産系の確立に成功しています。
私たち北海道三井化学では植物細胞培養技術を利用し、化粧品・健康食品・医薬品などの原料となる植物エキスの開発・共同研究開発・研究/生産受託事業を行っています。
植物培養エキス製造のステップ
- 植物の一部を切り取り、無菌処理をした後、栄養源(ビタミンやミネラルなど)の入ったプレートで培養
- 植物の形にならずに細胞の状態のまま増殖
- 増殖した細胞を無菌の状態で液体培養し、更に細胞を増殖
- 培養タンク内で細胞を増殖させ、機能性成分を生産
- できあがった培養物から機能性成分を抽出&精製
植物細胞培養技術を応用した原料の利点
利点1 機能性成分の効率的かつ安定的生産が可能
植物エキスを製造する際に、天然資源や栽培品を原料とすると、「植物の生長に時間がかかる」、「採取できる季節が限定される」、「一度に精製できる機能性成分が少ない」、「植物個体ごとに機能性成分の含有量にバラツキがある」などの問題点があるため、多量かつ安定的に生産するには課題があります。
細胞を無限に増殖させることができる植物細胞培養技術を用いれば、自然には微量にしか存在しない機能性成分の効率的な生産が可能です。
例えば抗がん剤パクリタキセルでは、患者1人の治療に必要な量は約2g。
同量を天然品から得るには、イチイの樹皮30kg(高さ30~40mの大木4本分)が必要です。
更にその大きさの樹木の生長には数10年の時間を要します。
それに対して、植物細胞培養を用いれば、パクリタキセルを樹皮に比べて20,000倍以上の生産性となり、生産培養2週間の期間で取得が可能です。
また、植物細胞は一度未分化で増殖する細胞株を取得できればその後は原料植物は不要で、未分化細胞を継続的に増殖させることができます。
そのため、絶滅危惧種に指定されているような希少な植物の細胞が必要な場合も、貴重な資源を損ねることなく、機能性成分を効率よく生産することが可能です。
利点2 生産の管理ができる
天然資源や栽培品の植物を原料とする場合、長雨・台風・干ばつなどの気象災害、更には病虫害等により、「どの時期にどれだけの量を確保できるか」や「機能性成分の含有量確保」を正確に予測することは非常に困難です。
無菌状態で徹底した環境制御の中、細胞を増殖させ、機能性成分を生産させる植物細胞培養技術なら、季節を選ばず生産管理が可能です。
利点3 混入物のリスクが少ない
天然資源や栽培品の植物を利用する際には、生育中に与えられた農薬や、土壌中の有害な重金属などが不作為に混入するリスクがあります。
無菌で培養を行う植物細胞培養では、意図しない外部からの混入物のリスクは一切ありません。
また、培養液成分に動物由来物質の使用もありません。